シャンティイ競馬場の概要
シャンティイ競馬場はフランス・パリから北へ約60km離れたオワーズ県にある競馬場です。
パリ中心地からシャンティイ競馬場までは、TERと呼ばれる電車で約25分、車で約1時間の場所にあり、パリの玄関口となるシャルル・ド・ゴール国際空港からも約30kmという交通の便が良い競馬場です。
毎年5月から6月には、フランスのダービー(ジョッケクルブ賞/Prix du Jockey Club・G1)、オークス(ディアヌ賞/Prix de Diane・G1)が行われます。
1719年に建設された風格のある大厩舎と映画『007』にも出てきたシャンティイ城に隣接するシャンティイ競馬場は、世界で最も優雅な競馬場のひとつと言われることもあるほどに美しい競馬場として知られています。
その歴史は大変古く、1834年に最初のレースが開催されており、1836年には第1回ジョッケクルブ賞、1843年には第1回ディアヌ賞が行われ、フランスに存在する最古の競馬場となっています。
シャンティイの地に競馬場が作られた経緯として、この土地の芝生の弾力性が非常に優れていたことが挙げられます。この芝生が、フランス馬種改良奨励協会の目に留まったのです。その後、優れた芝生だけでなく、競馬関連施設を建設するための十分な敷地もあったということも分かり、1833年の秋に競馬場の建設計画が始動しました。
そして、その翌年にはシャンティイ競馬場での第1回目のレースが開催されたのです。実はこの競馬場建設の早さに、日本とヨーロッパにおける競馬場の違いが隠れています。
日本の競馬場は円形で、芝・ダートは問わずトラックコースになっています。これは馬が安全に走れるように、水はけの良い土壌に改良したりクッション性を高めたりして、かなり手をかけて整備されているのです。
一方、ヨーロッパの競馬場の多くは、馬が走れそうな芝が生えている野原や丘に、直接ラチ(コースを区切る柵)を作り競馬場にしています。
つまり、ヨーロッパの競馬場は日本の競馬場と比べると最低限の整備で建設されているため、起伏や地面の凹凸が激しいのです。日本馬がヨーロッパ遠征で苦戦を強いられやすいのも、こうした理由があります。
シャンティイ競馬場 主要レース
シャンティイ競馬場では、3つのG1が有名です。
- フランスダービー ジョッケクルブ賞(ジョッキークラブ賞)(Prix du Jockey Club)
3歳馬のみ、2100mの芝コース - フランスオークス ディアヌ賞(Prix de Diane)
牝馬のみ、2100mの芝コース
コースの特徴
シャンティイ競馬場のレースは、右回りで行われます。
芝コースは4つあり、外側が2400m、内側が2150m、円形コース、直線コース1200mで成り立っています。外側2400mのコースは、高低差が10mあり、ゴール前の直線は約600mです。内側2150mコースは、同じく高低差10mにゴール前の直線が約550mとなっています。
芝レースのゲートは13カ所に設置が可能で、1000mから4800mとかなり幅広い距離の調整が可能です。
さらに、芝コースの内側にはポリトラック素材のオールウェザーコースがあります。このコースは2011年に完成したばかりです。オールウェザーコースの特徴は、雨が降っても水を含まないこと。見た目は砂のような状態なのですが、雨天時もダートのように重たくならないため、全天候型のコースとなっています。
シャンティイ競馬場で最も特徴的な点は、3コーナーから4コーナーにかけたアップダウン(高低差)です。
勝負どころで置いていかれないよう、スピードに乗りながらもしっかりコーナーを回りきり、最後の直線を迎えるというポイントが、ジョッキーの腕の見せ所となっています。
また、高低差だけでなくコーナーの角度にも注意が必要です。4コーナーには角度があるため、馬が外に振られやすいコースとなっています。直線を向くときに外に膨れることなくぴったりと回ってくるという点も、勝敗を分ける大きな要素のひとつです。

シャンティイ競馬場 現地の様子
日本で競馬というと、公営ギャンブルやレジャーの印象が強いですが、フランスでは競馬場は社交場として機能も大きいです。
大きなレースの際、観客は着飾って来場し、歓談を楽しみます。
特に、多くの女性が着飾って競馬を見にくるディアヌ賞(仏オークス)はファッション面でも注目されており、平地競馬の中では凱旋門賞に次いで2番目の観客動員数です。
シャンティイ競馬場はシャンティイの森の中にあり、その森にはフランスギャロ(フランス競馬統括団体)が管理する広大な調教センターがあります。そこでは、約3,000頭のサラブレッドが日々レースに向けて調教されています。

その土地柄から、シャンティイの街は「馬の街」「競馬の街」と呼ばれることもあります。ジョッキーや調教師などの多くの競馬関係者がこのシャンティイの街に住んでおり、日本の栗東・美浦トレセンのような役割を担っているのです。